但し、当ページでは「O’cell製品」であること、また当店で販売しているリン酸鉄リチウムイオンバッテリー組電池(特別なBMSが搭載されています)であることを前提に書かれていますので、バッテリー仕様の異なるもの(ブロック型セル等)、内蔵されたBMS制御基板における電気的仕様や設定閾値の異なる他社製品には適用されません。
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- リン酸鉄リチウムバッテリーを使用したソーラー蓄電システムの設計方法
当ページでは、当店【蓄電システム.com】で丸15年を超える販売実績のある、O’cell製リン酸鉄リチウムイオンバッテリーを使った、ソーラー蓄電システム、独立型ソーラー自家発電システムの設計方法について解説してまいります。
すでに、鉛ディープサイクルバッテリーを使用した場合の設計方法については、当店が事業を開始した当時から用意して公開していますが、まだまだ、粗悪品の多く流通するリン酸鉄リチウムバッテリー(組電池)ですが、その規模の大小はあるものの「ようやく安定した製品が出揃った」という時代になり、ソーラー蓄電システム設計にかかわる正しい技術論が少ない中、初心者の方々にもわかりやすく解説したいと考えています。
1番最初に考えること ※システム構築の目的
15年前から全くその内容を変更せずに掲載してある「鉛バッテリーを使ったシステム設計」のページと、概ね同じページ構成で解説しようと思ってはみるものの、リン酸鉄リチウムバッテリー(以下「リン酸鉄」と省略します)を使ったシステム設計では、鉛バッテリーよりも「充放電時の電気的な制約が広く取り払われた」ために、小難しい数値を並べて、計算式まで用意して解説する必要もなくなっていて、リン酸鉄ではその点の必要がほとんどなくなっています。
リン酸鉄リチウムバッテリーを採用した場合には、それらの制約や厳密に順守していただきたい数値条件が一気に解消していますから、システムを設計するにあたり、ずばり「何をしたいか?」「どんな電気機器を連続して使用したいのか?」だけを考えれば、おのずとバッテリー容量+DC-ACインバーター(以下「インバーターと省略します」の、四大神器のうち2台機材分が、早くもこの段階で決定することになります。
例えば、これからソーラー蓄電システムを導入しようとお考えで、それでも最終的には家庭内で使用する全電力量の50%くらいを目標とするケースや、あくまでも本来の導入目的は、非常時、停電時における必要最小限度の電源システム規模で構わないが、少しの電力は日常的に使ってみたいという方まで、家庭環境、家族人数、ソーラーパネルの設置条件によってさまざまです。
一般的な家庭用コンセントの1系統から出力できる電圧は「AC100V」(エアコン等ではAC200Vもあります)ですが、その容量は最大「15A」であり、すなわち100V×15A=1,500Wということで、家庭用の電気機器の説明書を見ればおわかりのとおり、基本的にこの容量を超えてしまう家庭用電気機器はありません。
※安全のため、ブレーカーBOXに収納されているブレーカーは「20A」仕様となっています。
要するに、最初に書いたとおり「どんな電気機器をインバーターからの出力を得て使いたいのか?」ということでありますが、さまざまな電気的な制約があった鉛バッテリーとは異なり、仮に最大消費電力が「600W」の大型冷蔵庫であれば、600Wh以上のリン酸鉄を選択すれば足りることになります。
この「600W=600Wh以上」という関係は、ある意味リン酸鉄の「高いエネルギー密度」故の優秀な性能ということになるのですが、この性能数値を「1C」と言い、Cとは=Capacity(容量)を表していて、600Whの容量を持つリン酸鉄は、最大600Wまでの充放電(同時充放電が可能)ができるということになります。
鉛バッテリーでは、基本的に性能表示としての充放電容量を数値はメーカー非公開とされていますが、概ね「1/15C」が製造メーカーの期待的な数値となっていて、すなわちリン酸鉄では「15倍」もの秀逸な性能を持つため、結果として大きく重い鉛バッテリーを直並列接続構成することなく、たった1台だけで目的のシステム構成ができるという訳です。
次項では、「その600W電気機器を何時間くらい使いたいのか?」によって決まる、用意すべきバッテリー容量(すなわち並列接続にして容量を増やす)について、前記した「最大消費電力が600Wの大型冷蔵庫」を基準にして解説します。
2番目に考えること ※用意すべきバッテリー容量
用意するリン酸鉄リチウムバッテリー容量とは、鉛バッテリーにおける設計方法ページにある「連続動作担保日数」のことですが、前項で書いたとおり「リン酸鉄は充放電ともに1Cが可能」ですから、仮に夜間の日照のないときには、電気機器を商用電源コンセントに切り替えればよいとお考えであれば、用意すべきソーラーパネル容量は600Wで足りるという点がおわかりいただけるはずで、リン酸鉄で考えるのは動作担保日数というより「動作担保時間」で考えることになります。
ところが、実際の冷蔵庫の電気仕様として表記されている600W消費電力とは、冷媒装置を含むファンが回転している「最大消費数値」であり、一般的なインバーター式大型電気冷蔵庫の場合には、平均値で「100W以下」(季節や開閉頻度にもよります)となります。
ここでは、雨天、曇天時や日照変化による発電率については一切無視して書きますが、100Wのソーラーパネルが日照のある「6時間充電」できれば、合計消費電力と合計発電量は「600Wh消費電力=600W発電量」となりますので、日没後のバッテリー容量は、理論的に満充電を維持していることになりますが、実際には夜間に使おうと思えば、当然に冷蔵庫は日没後でも6時間動作を続けることができます。
これまでの鉛バッテリーでは、前項に書いたように「最大1/15C」の充放電条件でしたから、連続充放電電力が「平均100W」の冷蔵庫であった場合には、日中だけの動作担保としても、理論値では「100W×15倍=1,500Wh」の鉛バッテリーを用意する必要があり、「1,500Wh÷12V(鉛バッテリー電圧)=約145Ah」を最低でも用意しなければならないものの、鉛バッテリーが実際に使えるとされる容量は70%が限界(新品時)ですので、「145Ah÷70%=207Ah」とかなり大きな容量となってしまっていました。
その重量差は、概ねリン酸鉄「約7.5s」に対して、鉛バッテリー「約53s」と7倍にもなります。
3番目に考えること ※用意すべきソーラーパネル容量
ここまで読んでいただいて、何となくお気づきだと思いますが、言い方を換えれば
リン酸鉄では鉛バッテリーに比較して電気的な制約がほとんどない
ために、自身の望むシステム構築の設計にも、ある意味において制約がなく、広範な設計がいくらでも自在に設計できることがおわかりいただけていると思います。
使用目的の電気機器の消費電力と、ソーラーパネル容量を「双方同時に1Cまで」と考えることができるのですから、昼夜の時間割合がそれぞれ50%である季節では、理論的には2倍のバッテリー容量に増やせば足りることになりますが、そこには日々の日照条件や発電率条件は含まれていないものの、小さく軽いリン酸鉄がいかに柔軟性のあるバッテリーであるかは十分に理解いただいたはずです。
当ページで最初に選んだバッテリー容量は(600Wh)ですが、これはリン酸鉄の種類としてはかなり小さい方で、「12.8V仕様、約47Ah」、「25.6V仕様、23.5Ah」「51.2V仕様、11.7Ah」(すべて理論的な計算値)となりますが、これを大幅に超える容量製品は多くあり、51.2V定格では最大72Ah=約3,700Whもの容量製品も販売もあります。(最大6並列可能です。そのときの容量は「22,200Wh」となります)
上記「51.2V定格72Ah」では、すなわちリン酸鉄リチウムバッテリー1台で、3,700W規模までのソーラーパネル容量を適用できるということであり、先の最大消費電力600W(平均100W)の冷蔵庫だけでは過大な容量となってしまいますが、ソーラーパネル容量を大きく減らして、24時間365日の連続稼働を担保することも可能です。
昼間に日照のあるときだけ放電できればいいという使い方であれば、使用する電気機器の消費電力に応じた最小容量のリン酸鉄とインバーター、発電率をあらかじめ決めた最低容量のソーラーパネルを選択すれば、最もコンパクトかつ廉価なソーラー自家発電システムが完成できるということなのです。
4番目に考えること ※想定される消費電力だけでバッテリー容量を決める
ここまで読んでいただき、リン酸鉄リチウムイオンバッテリーの、ある意味「柔軟性」と「高性能性」については十分ご理解いただけたはずですが、では実際にご自身でシステムを導入しようとするときには、将来的なシステムの増設や分散可能性(1系統を2系統に増やす)、家族構成の変化に応じたシステムの変更(1系統を2系統に分散させる)についても考えてみなくてはなりません。
最近は、通称「ポタ電」(オールインワン式ポータブル電源)が巷間多く見られますが、当店【蓄電システム.com】では一切販売しておりません。
そうでなくても、冒頭に書いたように、最近になってようやく「各種機器の性能が安定して出揃った」のとおり、この話の中にポータブル電源システムは含まれていません。
通称「ポタ電」とは、当店のようにそれぞれの必要機器を分離して構成している訳ではなく、出自も製造元わからないメーカー製の裸基板で構成されていて、当店の知り限りにおいては、残念ながら当店で販売している単体機材の性能とは大きくかけ離れたものだと言わざるを得ません。
もちろん、これから性能も耐久性能も上がってくるのでしょうが、仮に内蔵された3種類の機材のうちのひとつが故障した場合、特にインバーター機能を失えば「タダの大きなゴミ」と化すことになりますので、その点がまだ当店で太鼓判を押せるような製品まで進化しておらず、当店ではとても怖くて手を出すところまでは成長しておりません。
さまざまなメーカー製のポタ電を分解して基板構成を確認したところ、発熱体同士(インバーターとコントローラー基板)が肩を寄せ合っており、電気的なシールド効果にも疑問符がついていて、コスト削減だけが目的になっているように見えました。
前置き長くなりましたが、すなわちソーラー蓄電システムの真骨頂とは、お持ちのパネルやバッテリー、コントローラーを自由自在に構成変更して、用途に応じたシステムの結合(1系統の増強)や、システムの分散、増設を楽しむことにほかなりません。(ポタ電にはない醍醐味と安心感でしょう)
ここまで書いてきたように、リン酸鉄リチウムバッテリーの高性能と柔軟性によって、放電は「1Cまで」となりますから、基本的に使用する家電製品の最大消費電力を出力できるインバーターを選択すればいいことになります。
すなわち、想定している電気機器の消費電力の最大値が、冷蔵庫(平均100W)であるものの、これに加えて1,200W最大電力を必要とする電気掃除機を使うことがある場合には、最大1,500W以上のインバーターを選択することになります。
当店では、10年以上前から「システム分散の必要性」を、購入者みなさまにはしつこいほどに説いてきましたが、仮に前記した1,500Wインバーターに対して、ごく短く使用頻度の少ない電気掃除機の消費電力など「たかが知れている」ので、当店では「電気掃除機は商用電源だけで使う」という割り切りがありさえすれば、700Wクラスのインバーターで足りるのであって、そちらの方がよほどコスト的にも合理的と言えます。
ここでは、インバーターの定格容量が大きければ大きいほど「自己消費電力量が大きくなる」ため、連続平均100W(最大600W)の消費電力しか持たない冷蔵庫に対して、1,500Wのインバーターの自己消費電力は「60W近く」を必要としますので、電気の無駄遣いであることはお分かりいただけるはずです。
※最大1,500W出力のインバーターが内蔵されている「ポタ電」で、日常的に20Wに満たないノートパソコンしか使わない方から「バッテリー容量どおりの放電ができないのはなぜか?」という質問が多く寄せられますが、インバーターの自己消費電力を考えていないからにほかなりません。
インターネット接続を、停電時に維持するためにシステムを導入した方であれば、最大でも10W以下の連続消費電力でしかありませんので、当店では150W最大出力のファンレスインバータ―をお勧めして、停電時の24時間連続稼働であれば、リン酸鉄リチウムバッテリーとの適合が20Ahクラスなので、ソーラーパネル容量は「12.8V×20Ah=256Wh(1C)ですから、日中の急速ソーラー充電をご希望であれば200Wパネル(1時間フル充電)、夜間のネット接続維持だけでよい方には、設置環境に応じて20W〜80Wパネルを柔軟にお考えいただいております。
バッテリー容量を後日になって「増やしたい」という方は、O’cell製のリン酸鉄リチウムバッテリーであれば、最大「6並列まで可能」となっていますので、同じバッテリーを1台ずつ増設するという使い方もできます。
但し、6並列接続構成にした場合でも、充放電が可能な容量はあくまでも「1C」までになりますので、若干ののりしろはあるとしても、1台のときと同じ容量の充放電しかできませんので、あらかじめご承知おきください。
以上ですが、「なぁ〜んだ!リン酸鉄リチウムバッテリーを使ったシステム設計方法の具体的な方法論ではないじゃないか!」とお思いの方、まさしくそのとおりであって、その柔軟性から、ある意味「1C充放電の範囲であれば何でもできる」ということなのです!
当店の知る限り、長くお付き合いのある会員様は、ほとんどの場合「2系統以上」のソーラー蓄電システムを持っており、日常使いの最大1,500Wインバーター系統には800Wパネル、ネット接続環境には150Wインバーターに対して100W規模のパネル、適用しているリン酸鉄リチウムバッテリーは、それぞれ2,000Wh超えと200Whとしている方が多くいらっしゃいます。
小容量系統では、停電時にガス給湯器の電源用としても使えますし、大容量系統のリン酸鉄リチウムバッテリーには、2台のインバーター(ほかに500Wクラス)をぶら下げて、昼夜でインバーターの自己消費電力を抑制している「賢い会員様」もおります。
リン酸鉄リチウムバッテリーの販売開始から15年が経過しますが、重くて大きく、耐久性能にも欠ける鉛バッテリーは、ソーラー蓄電システムとは、そろそろお役御免となる日も近いでしょう。
今一度書きますが、通称「ポタ電」とは、すでに決まった容量の自己消費電力を持つインバーターが内蔵されており、下手をすると交換修理もままならない製品であることを十分に承知の上、またシステムの増設やインバーターの2台接続すらできないこと、せっかく2,000Wh以上のバッテリーが搭載しているにもかかわらず、最大500W程度までのパネル入力しかできないことも理解いただけると幸いです。
それら「ポタ電」に搭載されているリン酸鉄リチウムバッテリーの理論容量どおりに充放電を可能にしている方がいらっしゃれば、ぜひ当店へご連絡ください。
低電圧遮断閾値も「かなり上の電圧」にあって、そんなインバーターの大きな自己消費電力とともに、きっと理論容量の「半分程度」くらいしか実際には放電することもできないはずです。
このページを読んだ方は、独立単体のリン酸鉄リチウムバッテリーの優位性はお分かりいただけたものと信じています!
以上です。
鉛ディープサイクルバッテリーを使ったシステム設計は以下ご参照ください。
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